
■□■ いちはらやすし・こんなことしてますNEWS ■□■
□□ 2010 / 7月号 □□
TRIO’、ライブ録音、その後・・。もう何回聴いたことだろう。聴く場所や、スピーカーによって、そして時間が経つにつれて聞こえ方が変わってくる。ある程度まではOKテイクを絞ることが出来ても、それからが難しい。曲順にしても明確につながるものとつながりにくいものがあるから、一番の落としどころを見つけるのに本当に時間がかかる。一度ボツにしたものをもう一度聴いてみる。そうしたら、結構つまらない理由でボツにしたりしている。商業音楽のスタジオレコーディングだったら、さっさと直して見栄え良く作ってしまう。しかしライブ、しかもジャズでは一度やったら修正するのはなかなか難しい。それが逆に良いところでもある。今の商業音楽にはミスをそのまま残しているという例は先ずない。ほとんど完璧に出来上がっている。でもそういうものってなぜかおじさんの感性を刺激しない。マイルスのMy Funny Valentine・・これ、ライブである。あの当時のマイルスの動画で結構出来の良くないものも見たことがある。ということはやはりあれはすごく良いテイクをアルバムにしたわけだ。ただしあのアルバムの良さはきっちり出来ているとかそういったレベルの良さではない。現に明らかにずれているところがあったりする。しかしおかしくない・・。どうしておかしくないのか・・よくわからない。どちらかと言うとものすごく良い。このテイクがOKになったのは、少なくともきっちり出来上がっているからではないことはわかる。そこには何があるかというと、。ひとりひとりがはっきりメッセージを述べていて、それが縦割りとか平面とかの次元をはるかに超えた不思議な空気の糸によって結ばれている。張り詰めた空気がある。あれ、たまらなく好きだ。その空気の中で観客から全く音楽の一部としか言いようのないかけ声が入る。「Yeah------!|・・空気が音楽になっている。いや、音と音の関係が、人と人の関係が音楽になっている。音がずれていてもおかしく聞こえないのは「関係がある」からなのだと思う。
TRIO’の5枚目、リリースに向けて着々と準備を進めています。今の時代は配信サイトから音楽を買うことが多いけど、このライブ盤は一曲が長い。一曲十分前後ある。配信で買ってもらう感じのものではない。だからジャケットもしっかり作って、「このCDを手にしたい」と思わせるような、時代遅れかも知れないがそんなものを作りたいと思う。まだまだ作業が続く。これからの山場はミックスダウン、それからデザイナー選びとその後の作業。それからマスタリング。TRIO’5は営業的には・・そう、毎回言っているような気もするが・・正念場。
さて、7月のライブ。少ないです。ほぼ月例のようになってきた横浜ドルフィー、古野光昭セッション。15日(木)、毎回メンバーが違うから市原的には新しい出会いの場所。そして25日(日)は川口国際文化交流フェスティバルと題して前田憲男ウインドブレーカーズで川口リリアホール。出演者はウインドブレーカーズの他にNAOTO,vn、国分弘子,pf、タイムファイブ、フォー・カラーズ/赤城りえ、井上信平、木戸夕果、Steve Sacksというフルートのユニットなど、多彩な出演メンバー。ウインドブレーカーズがこの人たちと一緒にやるかどうかは未確認。そして30日(金)には岩渕まこと/ペトラストリート+。今回は「+」というのが付いている。まずはバイオリン,宮池正子、そしてボーカルに岩渕由美子、そして初登場、TRIO’のディレクターでもあり前回のアルバムでは歌でも登場している大谷よしみがボーカルで加わります。あの小さなステージ、誰かあふれて落ちるかも知れない。
あ、それから、ツイッター・・始めました。http://twitter.com/ichiharayasushi
ということで、7月もどうぞよろしくお願いします。
ライブの場所や時間などの詳しい情報はホームページからご覧ください。

今回のTRIO’ライブレコーディング。東京はBody & Soul、そして前橋のYUME studio。どちらも事件があった。それは最初のステージの演奏に対して、両方共にクレーム・・ではないが、どうも行けてないんじゃないかなというような反応。どちらも親しい友人が忌憚のないところを、しかも1stステージが終わったその場で語ってくれちゃったというわけ。Body & Soulでは、「なんだか力の出し惜しみをしてるみたいにきこえた。」という。前橋では、「硬い・・だったかな? いつものTRIO’みたいにやってよ。」といった反応。後で考えてみると、レコーディング用に叩いていたという嫌いがあったかも。三人の音のかぶりを考えてレコーディングにふさわしいような音量、たたき方、、意識していたわけではないが、どうもやっていた可能性がある。それともう一つ、Body & Soulの1stテイクではドラムの音と三人のアンサンブルの響きがとてもやりにくく、録音を担当していたオノセイゲンさんに勧められて2ndセットではドラムの下に硬いものを色々置いてみたりした。といってもセットは出来上がっているので譜面台を倒して下に敷いたり、音響機器のケースの蓋をあちこちにおいたりと・・。その他、ピアノのモニター音量を少し下げる、ベースを少し上げるなど、調整を試みた。これが結構効いて、かなり音は混ざるようになってやり易くなった。ああ、それから、、。前橋では客入れ前に何曲かレコーディングをやってみた。そして本番前にプレイバックを聴いてしまったワタシ。「えええっ・・(汗)」ってな具合で、こんな荒っぽい演奏してたの?・・みたいな事になってしまって・・。たまたま粗いところを聴いたんでしょうけど。まあ本番直前にしてどうしようかと思っちゃいましたよ。しかし本番では私としては、そうだ、もう一度あれこれ考えていることをすべて捨てましょう・・と。それでずいぶん楽に演奏が出来た。しかも緊張感もあって、、。だから結構いいんじゃないかなというところにあの友人の一言・・。何をぐだくだ言っているのかと思われるかも知れないが、そう、私の心はいつもちょっとしたことに揺れ動いているのであります。しかしこの友人たちのお陰か今までのTRIO’のアルバムには見られないアグレッシブなTRIO’をこんどのライブアルバムではお聴かせできそう。前橋終了時点ではとにかく心地よい達成感をもって終えることが出来ました。・・と、ここまでは長い前置き。
今ではこれらの固定された音を使ってアルバムに出来るかというところで奮闘しているわけで。これが楽しいというか、大変というか、とにかく苦労感はないが根気のいる仕事をやっている。当初、OKテイクはBody & Soulの前半が余りやり易くはなかったという印象と、前橋での最終的な後味が良かったことが手伝ってか、選んだテイクはほとんどすべてが前橋・・。そして事もあろうにツイッターにBody & Soulのお客様、すいません、今回ほとんどこちらのテイクはボツとなりそうです・・なんて言っちゃったりなんかして。。。でも、何回も何回も聴いて、そしてそうだ、もう一度Body & Soulのテイクを聴いてみよう・・となり、聴いてみたらナント・・、Body & Soulのテイク、ずいぶん元気ではないか、力強いし面白いではないか。Body & Soulは名古屋から帰ってそのまま入って、体は疲れ果てていた。ツアーの終盤、車の旅を続け、限界に近い状態。こんなこと、ちゃんと予想してライブレコーディングの計画を立てれば良いのにと・・後悔しても始まらない。しかしわからないものである。空間の音の印象と録音された音の印象とは別なものなのかも知れないが、まさか、、、元気だとは・・。アハハハハハ。ってな具合で、今回恐らく・・恐らくですよ・・ほぼ最終案に近づいているのですが、Body & Soulから4曲、前橋YUME studioから4曲、そしてこれはお楽しみと言うところにしたいけど、がまんできないから言っちゃうと、最終日レザールで客さんが録った音から一曲収録したいと考えている。まだ最終決定ではないが、今その方向で準備を進めている。
ということで、、、先行き明るいです。はい。セイゲンさんが試しにミックスしてくださった一曲を聴いて、、、これは良いものが出来そうという感触。今からそんなこと言って良いのかという思いがよぎるが、、そう、、TRIO’はすべてこの調子で今まで来た。第一枚目のアルバムは、収録その日に福田と森が初対面。そしてその二日後からツアーをやったという。すべて不思議に与えられた確信・・言い換えれば激しい思い込みに支えられて今までやってきた。そう。この五枚目「TRIO’5 / LIVE AT Body & Soul, YUME studio, LEZARD」、皆様にお届けできるのもそんなに遠くはないと、、。どうぞ、お楽しみに。今までの四枚のアルバムとは全く違う、まさに「ライブ盤」です。
写真・・撮影 : 平田一八